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関東の興味深~いクジラの歴史と文化、っていうお話

kujira-takahama

Updated: Jan 23

南房総の夏はクジラの水揚げで活気づくんやて!

内陸県でも広く化石が出土してますよ~!


まいどおおきに。

大阪の中央卸売市場で鯨肉の仲卸をやってる高浜康子です。


今年もよろしくお願いします。

去年新しい捕鯨母船ができたって話、覚えてますか~?

そう、関鯨丸!5月に山口県下関から出港して、約6カ月間の初航海を終え、12月に無事、下関に帰港したんやて!

約50年ぶりに捕鯨が認められるようになったナガスクジラ30頭と、ニタリクジラ175頭、イワシクジラ25頭の計230頭を捕獲したそうです。


今年も期待してるで~!


ところで、日本の主な古式捕鯨地ってご存じですか?

いわゆる昔のクジラの水揚げ地兼解体加工地ってことですね。

現代の母船式捕鯨船の「関鯨丸」のように、捕獲したクジラを船の上で解体して冷蔵・冷凍できるような大きな船も技術もなかった時代は、近海で捕獲したクジラを港まで引っ張ってきて、陸に揚げて解体し、それを各地に輸送していたんですね。

その解体するための本拠地は日本に数カ所あって、下関や平戸あたりを含む西海海域、高知県の窪津、浮津・津呂、紀伊半島周辺の古座・太地、日本海側では伊根浦、能登半島の先っぽ宇出津、北海道の霧多布(きりたっぷ)、そして関東の勝山にあったそうです。


今回は、その古式捕鯨地のひとつがあった関東地方のクジラの歴史や文化について調べてみました。

現在も日本には4つの小型沿岸捕鯨基地(商業捕鯨地)があり、北海道の網走、宮城県の鮎川、和歌山県の太地、そして南房総に位置する和田浦となっています。

千葉県南房総市では「クジラのタレ」っていう郷土料理が根強い人気やねんて!

おかずにもおつまみにもピッタリやそうですよ。


今回もクジラの文化や美味しい情報も調べて書いたんで、ぜひ読んでみたって~。


<写真>「道の駅和田浦W・AO!」に展示される捕鯨砲


<参考サイト>


・お帰り捕鯨母船・関鯨丸 ナガスクジラなど230頭捕獲 山口・下関


・道の港 まるたけ





 

【目次】



 


内陸県でも化石が出土、南房総では現在も捕鯨を実施!


千葉県市原市では、縄文後期の上高根貝塚から、大きなクジラの骨が見つかっています。

またこの付近から、クジラの脊椎骨を石皿のように加工したものも出土しています。


館山市の鉈切洞穴(なたぎりどうけつ)という縄文時代の遺跡からもイルカの骨が出土しています。

南房総市は、日本政府が管轄している合法的な小型沿岸捕鯨が実施されている4カ所のうちのひとつです。

現在日本では、ツクジラ・マゴンドウ・タッパナガ・ハナゴンドウの4種類が小型捕鯨の対象となっています。

南房総の捕鯨は長い歴史を持っています。


鎌倉時代の遺跡からの出土品や記録などにより、13~15世紀ごろまでに房総で沿岸捕鯨が始められた可能性があるそうです。


そして江戸時代の1612年、ツチクジラを対象とした捕鯨が鋸南町勝山の醍醐家により組織化され、大きく発展しました。

その頃は網取り法が主流でしたが、鯨船の船頭がクジラを取り囲み、銛で捕獲する「突き取り法」を採用しました。


明治半ば~30年代には西洋の技術が取り入れられ、火薬を使う捕鯨法「ノルウェー法」を導入し、会社組織で捕鯨が行われるようになりました。


現在でも南房総市の和田浦では、昭和23年に設立された外房捕鯨株式会社が伝統を引き継ぎ、6月末〜8月末の決められた期間、決められた頭数のツチクジラ漁を行っています。


茨城県では、下妻市の遺跡から、クジラの脊椎の化石が出土しています。

那珂市では、1984年に久慈川の支流谷津川右岸の崖で、中期中新世末から後期中新世初頭、哺乳類動物が出現した頃とされる約1100万年前の地層からマッコウクジラの歯の化石が発見され、当時の地名から「ナカマチクジラ」と命名されたそうです。


日立市には、江戸時代のクジラの扱いが分かる資料が残されています。

1839年、多賀郡宮田村(現日立市)の浜辺に「もろとも」という大きな魚が17本打ち寄せていました。

「もろとも」とは茨城県におけるクジラの方言です。

大きさは9尺~4間(2.7~7.2メートル)あったそうで、村役人は人々が触れないように番人を立て、水戸藩の郡奉行所に処置方法についてお伺いをたてたとのことです。

その後、クジラは部位ごとに切り分けて入札にかけられるなどしたようです。


1688年、那賀郡湊村と平磯村(いずれも現ひたちなか市)の船が共同でクジラ1頭を捕獲したという記録も残っています。

他にも、現在の北茨城市や高萩市などの渚にクジラが流れ寄ってきたという記録があります。


<写真>PhotoAC「ひたちなか市あづまが丘公園のベンチ」より 


栃木県那須烏山市では、1978年から1979年にかけて、荒川沿いの約1200万年前の地層から、肋骨や脊椎、下あご、上あご、頭蓋骨の化石が発見されました。

ヒゲクジラの類と推定され、「オオガネクジラ」という俗称があります。


宇都宮市では、2012年に鬼怒川河川敷で、ほぼ全身の骨格がそろった約1000万年前の化石が見つかりました。全長約8メートル、ナガスクジラの一種と考えられています。


群馬県高崎市吉井町では2002年に、鏑川河床で、ヒゲクジラ類のジョウモウクジラの頭蓋骨、下あご、椎骨などの化石が発見されています。


埼玉県の秩父盆地は、かつて古秩父湾という海で、クジラも泳いでいたそうです。

チチブクジラなどの海生生物の化石が採取されているとのことです。


内陸部の山梨県では、静岡県の駿河湾で水揚げされた魚介類が流通し、明治時代初期からイルカ食が行われていたそうです。

富士川町鰍沢河岸(かじかざわかし)からはマグロなどの大型魚類とともにイルカの骨が出土しているとのことです。


ちなみに写真は、クジラの文化とは全然関係ないけど、東京都稲城市にあり、稲城中央公園と稲城第二公園を結ぶ歩道橋として、南多摩尾根幹線道路をまたぐように架かる橋「くじら橋」の袂にある「稲城中央公園」のクジラのモニュメント。

「くじら橋」は地元の小学生からの公募で命名されたそうです。


<写真>PhotoAC「雪の稲城中央公園くじら橋(東京都稲城市)」より 


<参考サイト>


・上高根貝塚出土のクジラ骨


・捕鯨の歴史


・醍醐組と鯨のたれ


・「クジラの町」の南房総市和田町!クジラグルメと捕鯨の歴史を紹介



・鯨の化石(くじらかせき)


・ ナカマチクジラ 


・額田の化石・発掘物


・宮田村の鯨一件


・クジラの化石


・河川敷でクジラの全身化石発見 宇都宮、1000万年前


・高崎市吉井町産出のジョウモウクジラ化石


・秩父盆地はかつて古秩父湾という海でクジラも泳いでいた!


・Wikipedia イルカ





 



関東の各地で、クジラに関連する施設や鯨信仰などの文化が見られます。

いくつか調べてみました。


【東京都品川区】

1798年(寛政10年)、品川沖に紛れ込んで品川の漁師たちにより捕まえられた「寛政の鯨」といわれるクジラの供養碑が、利田神社の横に「鯨塚」として現存している。


<写真>PhotoAC「クジラ塚公園」より 


【東京都台東区】

国立科学博物館の館内にはクジラの骨格標本が、また屋外には体長30メートルのシロナガスクジラの実物大模型が、展示されている。


<写真>PhotoAC「東京都上野にある国立科学博物館前のクジラ」より 


【東京都昭島市】

1961年8月に市内の多摩川河川敷で、新種のクジラの化石が発見されたことにちなんだ「昭島市民くじら祭」が開催されている。

クジラを模した山車が練り歩くパレードや、模擬店や花火などが楽しめる。


【東京都三宅島

阿古錆ヶ浜に「鯨神社」と呼ばれる神社がある。

大飢饉で危機に瀕していたところ、1832年(天保3年)に流れクジラが到来し、役所の検分の後払い下げられ、飢えから逃れられたことへの感謝から、クジラの骨を埋葬し祠を建てたのが始まりとされる。


<写真>PhotoAC「三宅島・今崎海岸」より 



【千葉県南房総市】

関東唯一の捕鯨基地があるまちで、「道の駅和田浦」にはシロナガス鯨の骨格標本のレプリカが屋外展示されている。

白浜町乙浜でも江戸~明治時代に捕鯨が行われており、1871年頃、出漁前に漁師が無事を祈るため鯨塚が建てられた。

千倉町千田の長性寺には、1896年に捕られたクジラを弔うための鯨塚が残っている。


<写真>「道の駅和田浦W・AO!」に展示されるシロナガス鯨の骨格標本


【千葉県鋸南町】

江戸~明治時代、醍醐家などによって捕鯨が行われており、板井ケ谷の弁才天に1年に1基ずつ石宮が建立されてきた。


<参考サイト>


・Wikipedia 鯨塚



・利田神社・鯨塚


・昭島市民くじら祭


・鯨塚(くじらづか/Kujirazuka)





 


関東地域の鯨食文化について


関東地域で唯一の捕鯨基地がある千葉県南房総市の和田浦港では、毎年6月末~8月末にかけて、房総半島沖合で捕獲されたツチクジラが水揚げされます。

クジラの解体は一般公開されており、一般客や観光客もその場で鯨肉を買うことができます。

鯨食文化が地域に根付いており、飲食店ではクジラカツや竜田揚げ、クジラ汁、クジラステーキ、クジラコロッケなど多彩な料理が提供され、道の駅などでは大和煮やつくだ煮、ベーコンなどの加工品も販売されています。

炭や海苔のように真っ黒で木の皮のような見た目の郷土料理「クジラのタレ」は、鯨肉の赤身をタレに漬け込んで干し肉にしたもので、根強い人気があります。

鯨肉に鉄分が多く含まれるため黒い色になるそうです。

冷蔵庫がない時代の保存食として、各家庭でつくられていたと言われており、今よりもっと硬くて塩辛いものだったそうです。

現代では鮮魚店や物産品売り場などで、薄くスライスし真空パックしたものが販売されており、他県から帰省した人が買って帰るなどふるさとの味として親しまれているそうです。




<参考サイト>

・千葉・南房総のクジラ漁 400年の伝統 地域で守る懐かしの味





 


《クジラの豆知識》頻発するクジラとの接触事故について


船とクジラの衝突事故が問題になっているそうです。

最近では、2023年3月に神奈川県三浦市沖の海上で、釣り船とクジラらしきものが接触して、6人が救急搬送されました。2019年3月には、新潟と佐渡を結ぶ高速船がクジラらしきものと接触し、乗客約20人のけが人が出ました。


このような事故の発生件数は、全国的に増えているそうです。

クジラは哺乳類なので、魚と違い水面に浮上して空気呼吸する必要があります。

その際に、船と衝突する機会ができてしまいます。


事故の増加の原因は、捕鯨禁止に伴うクジラ資源量の増加や、船が高速・大型になり回避するのが困難になっていること、海上交通量の増加などが挙げられます。


対策として、クジラが嫌がる音を水中に発信する装置の搭載や、クジラの群れの情報を各船で共有するシステムの導入などが試みられているものの、あまりうまく機能してないとのこと。

より効果的な対策を見つける研究が進められています。




<参考サイト>


・船とクジラの衝突事故が増えているワケは? 有効な対策法はまだ研究中


・頻発するクジラと船との衝突


・クジラらしき物体と船が接触、釣り客6人が負傷 神奈川県三浦市沖


・佐渡行き高速船がクジラ?と接触、約20人けが 骨折で全治1か月の乗客も





 


《クジラの美味しい部位をご紹介⑭》赤身

クジラの赤身は、背・腹・胸から取れる肉です。赤身の中でも部位によって分類されます。

最高級部位とされるのが、背びれから尾の付け根までの背側にある「尾肉」。

「尾の身」とも呼ばれ、脂乗りの良い個体からしか取れない希少なもので、細かなサシが全体に均一に入っている見た目も美しく、クジラの大トロとも言われます。

霜降りならではの上質な旨みとジューシーな味わいが特徴で、刺身や炙りに最適です。

尾肉の中でもサシの細かさや筋の有無などにより、1級・2級などの等級に分けられます。


赤身の中でも腹側から取れる「赤肉」は、きれいなサシがあり脂乗りが良いですが、細かな筋が混じります。

刺身やレアステーキに最適です。


胸びれの付け根および頭頂部付近から取れる「ホホ肉」は、筋が少なく繊維が太いのが特徴で、しっかりとした弾力があります。

薄切りで刺身にしたり、ステーキや竜田揚げにしたりするのがおすすめです。


胸の部分から取れる「胸肉」は、きめ細かい肉質ながら、大きめの筋が混じっていることも。筋切りして刺身にするほか、ステーキや竜田揚げなどもおすすめです。



<参考サイト>


・クジラ肉の豆知識


・鯨について









《おうちでも簡単!鯨肉実践レシピ⑭》クジラのタレ


千葉県南房総の郷土料理「クジラのタレ」は、食卓のおかずにも酒のさかなにもなり、地元では年間を通して食されているそうです。

つくり手によって調味料が変わる家庭の味です。


《クジラのタレの作り方》

【材料】(20人分)

・鯨肉(赤身):1kg

・醤油:2カップ

・ニンニク:大1片

・ショウガ:10g

・酒:少々

・みりん:少々

 

【作り方】

・鯨肉を筋に沿って1cmくらいの厚さに切る。

・ニンニクとショウガをすりおろして、醤油と酒、みりんと合わせ、つけ汁をつくる。

・鯨肉をつけ汁に2時間ほど漬け込む。

・生乾き程度に干して、できあがり。火であぶって食べる。七味マヨネーズなどをつけても美味。




<参考サイト>


・くじらのたれ 千葉県


・くじらのたれ 千葉県南房総の郷土料理





 


<鯨肉を食べるならこのお店(出張編)>


千葉県南房総市「道の駅 和田浦 WA・O!」



2023年2月に行われた『くじらフェスOSAKA2023』っていうイベントに出店した際にとなりのブースにいらっしゃったのが、まさに、「クジラのタレ」を製造販売されるお会社の社長さんでした。

その時にお聞きした「どこで買えるんですか?」の答がこちらの「道の駅WA・O!」さんでした〜


場所は千葉県の太平洋側の端の方、「和田浦」という所にあります。



ここでは、鯨肉を使った色々なメニューが楽しめるんですよ。

写真は、鯨肉のカツ、赤身肉の刺身、鯨肉の竜田揚げが一度に味わえる「和田浜特製くじら丼」です。

ボリュームたっぷりで、鯨肉の美味しさをたっぷり楽しめる丼セット、おすすめですよ〜

他にも「くじらコロッケ」や「くじらの刺身」、「くじらの缶詰そのまんまランチ」とか、昔懐かしの「くじら給食」なんてのもあって、大勢で行って色々楽しむのもありやね〜





レストラン、お土産物屋さんのお隣の施設では「鯨資料館」なるものがあって、和田浦をはじめとしてかつての鯨漁の歴史や文化についての貴重な資料などを見ることもできます。

その施設の外には、本文でも書いた鯨の骨格標本も展示されているので、ドライブがてらぜひぜひ行ってみて〜


「道の駅和田浦WA・O! 」

千葉県南房総市和田町仁我浦243

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