その昔、クジラは東海地域の特産物やった!
古式捕鯨を今に伝える行事もいろいろあるで~!
まいどおおきに。
大阪の中央卸売市場で鯨肉の仲卸をやってる高浜康子です。
10月になってさすがに暑さも一段落しましたね。
これから食欲の秋本番!
美味しいものいっぱい食べたいですね!
ほんと、毎日が細々としたことで忙しくてなかなか新商品とかキャンペーンとか考えてる時間ないけど何とかしなくちゃ。
ということで先日、洋食やなぎのあっちゃんに新メニューの相談、してきました。
ギフトセットに使えたら良いな〜と思ってるんですが、またできたらご案内させてもらいます。
もちろん、鯨肉のセットですのでお楽しみに。
忙しいのもあって、もう体もバキバキです。
楽しみのひとつにマッサージがあるんですが、先日新しくできたマッサージに行ってきました。
なんと市場の入口にできたマッサージ店!
ちょっと高いからどうしよかな〜と思っててんけど、この前やってもらったら体に合ったのか調子良くて。
また時間見て行ってみたいと思いますが、市場に来られた際に、ぜひ行ってみてください。
さて今回は、東海地方のクジラの歴史や文化について調べてみました。
和歌山のクジラの記事でも紹介しましたが、熊野灘沿岸は古くからクジラが時折浜辺に打ち寄せられ、やがて捕獲するようになり、江戸時代には組織的な捕鯨が行われた地域です。
三重県の熊野灘沿岸でも、クジラの歴史や文化がたくさん伝わってますよ。
ちょっと読んでみたって~。
<写真>PhotoAC「三重 志摩半島の大王崎灯台」より
【目次】
伊勢・尾張の近海では捕鯨が盛んに行われていた
三重県周辺の海は、内湾で日本一の広さを誇る伊勢湾や、太平洋である熊野灘(くまのなだ)に面しており、クジラやイルカなどが生息、回遊しています。
伊勢・尾張の近海では、中世、クジラがたくさん獲れて、この地域の特産だったようです。
15世紀以降、色々な史料でクジラに関する記事が見られるようになり、16世紀には、クジラを銛で突いて弱ったところを網で捕まえる捕鯨技術が確立されていたそうです。
戦国時代には高級食材として扱われており、天皇に「鯨荒巻」を献上していた記録が残っています。「荒巻」とは、竹の皮やわらなどで魚などを巻いたもののことです。
あの織田信長も天皇へ初鯨を献上したという記録があるそうです。
<写真>PhotoAC「岐阜駅前の織田信長像」より
熊野灘沿岸では、江戸時代から捕鯨が行われていました。
「クジラ一頭とれば七浦潤う」と言われるほど、クジラが獲れると近在の人々の生活を豊かにするものだったそうです。
三重県尾鷲市の九木浦では、1674年にクジラを突いて獲ったという記録が残っています。
1754年9月、紀州藩による藩営捕鯨が九木浦で始まりました。
海上労働者192人に、陸上労働者を加えた総勢250~300人が働いていたそうですが、1769年には赤字がかさんで廃業となったとのことです。
明治時代になると、熊野灘沿岸では捕鯨会社が設立され、網取式捕鯨業が行われていました。
阿田和村(現御浜町)の鈴木雄八郎が和歌山県から漁夫を雇い入れ、1875年に鯨5頭を捕獲。
その後、地元の有志とともに捕鯨会社を設立したとのことです。
1904年、東洋漁業会社が、熊野灘沿岸で近代ノルウェー方式の捕鯨銃を使い百数十頭の鯨を捕獲すると、多くの捕鯨会社が熊野灘沿岸に進出しました。
1907年には大日本捕鯨会社が捕鯨銃による捕獲を始めましたが、1915年には操業を止めているとのことです。
<写真>PhotoAC「「甫母峠・鯨石」、熊野古道・伊勢路を歩く」より
写真は本文と関係ないですが、熊野古道の途中に「鯨石」と呼ばれる奇岩もあるそうですよ。
昔は鯨が身近だったのかも知れませんね。
静岡県では、伊豆地方を中心に、小型鯨類であるイルカの漁が古くから行われてきました。
伊豆半島沖の湾がイルカの回遊経路であり、また半島が複雑に入り組んだ地形だったことから、イルカを追い込んで捕獲する追い込み漁に適していました。
縄文時代の遺跡からイルカの骨が出土されており、中世、近世にもイルカ漁が実施されていた記録が残っているそうです。
明治時代から昭和30年代までさかんに行われており、伊豆で水揚げされたイルカが県内の他地域や、愛知県、岐阜県、山梨県に販売されていたとのことです。
現在イルカの追い込み漁を継承するのは、県内では伊東市のいとう漁協のみで、2004年に行われなくなりましたが、2019年から飼育用の捕獲に限って解禁されています。
<写真>PhotoAC「イルカ 香味焼き 静岡県」より
海のない岐阜県でも、クジラの化石が発見されています。
2016年、瑞浪市の中学校の工事現場で、クジラの下あごの骨や肋骨、椎骨など2頭分の化石が発見されました。
約170万年前の海でできた地層から見つかったとのことです。
<参考サイト>
・戦国日本の津々浦々
・伝統の網取式受け継ぐ-明治期に阿田和村で設立された捕鯨会社
・九木の藩営捕鯨
・発掘速報!クジラ化石の発見!
さまざまなクジラ文化が広がる東海地域
東海の各地で、クジラに関連する施設や鯨信仰などの文化が見られます。
いくつか調べてみました。
【三重県四日市市】
鳥出神社の「鯨船行事」は、ユネスコ無形文化遺産や、国の重要無形民俗文化財に指定された行事。
豪華に装飾された鯨船山車が、大漁や富貴の象徴に見立てたクジラと荒海で格闘し、仕留める様子を表現しながら練り歩く。
鳥出神社の最寄り駅である近鉄富田駅の駅舎は、クジラを模した形になっている。
磯津地区の「磯津鯨船祭り」は、2022年に21年ぶりに復活を遂げた祭りで、「大正丸」とも呼ばれる捕鯨船の山車が町を練り歩き、塩崎神社に入る。
<写真>PhotoAC「富田 鯨船行事」より
<写真>PhotoAC「富田の鯨船行事」より
【三重県鈴鹿市】
「長太鯨船行事(なごのくじらぶねぎょうじ)」は、飯野神社の秋祭りにて行われる。
伊勢湾に迷い込んだクジラを銛で仕留めるという古式鯨漁法を模した、神に様々な祈願を行う祭り。
捕鯨船に見立てた山車の「天王丸」を、捕鯨上下歌や太鼓に合わせて引き回し、歌が最高潮に達したクライマックスで若衆(踊り子)が軸先の張り子のクジラを仕留める。
【三重県尾鷲市】
飛鳥神社「はらそ祭り」は、江戸地雷に盛んだったクジラ漁を伝える祭りで、毎年成人の日に行われる。
「ハラソ!」の掛け声とともに海上に船を漕ぎ出して、クジラを銛で突く所作をしてみせる鯨船行事。
市の指定文化財。
【三重県鳥羽市】
「相差天王(おうさつてんのう)くじら祭り」は、相差の地に伝わるクジラに乗った観音様の伝説が由来の、豊漁感謝と航海安全を祈願するお祭り。
鳥羽から志摩にかけて、海岸沿いの港町を中心として各地区ごとに行われる。
大きな鯨神輿などが練り歩き、露店や花火大会などでにぎわう。
【愛知県名古屋市】
南区にある道徳公園には、1927年につくられたクジラのコンクリート彫刻があり、2021年国の登録有形文化財に登録され、地域のシンボルになっている。
江戸時代の干拓で新田ができるまで、この辺りは「あゆち潟」と呼ばれる海で、クジラやシャチも来ていたとのこと。
【静岡県松崎町】
「雲見くじら館」では、1977年(昭和52年)4月15日に雲見港に迷い込んだセミ鯨の世界的にも貴重な骨格標本が展示されている。
貴重な資料として、その昔、雲見上の山城主、高橋丹波守が北条氏に鯨肉を献上した古文書も残されており、「雲見くじら館」の近くにある雲見海岸には、クジラの供養塔も設けられている。
<写真>PhotoAC「雲見(くもみ)」より
【静岡県伊東市】
野生のクジラやイルカに出会える確率が高いと言われる伊豆海域をクルージングするツアーや、イルカと触れ合う体験ができるスポットがある。
<写真>PhotoAC「冬の城ヶ崎海岸・紺碧の海(静岡県伊東市)」より
【静岡県東伊豆町】
稲取地区にある「鯆霊(ほれい)供養塔」は、伊豆半島の7つの「いるか供養塔」のうち最古のもので、1827年に建立された歴史ある碑。
「鯆(いるか)」という漢字は、イルカだけでなくマグロ類やゴンドウクジラも含めた、大きな魚を意味するとされている。
「鯆」という字が使われている鯨塚は他にないとのこと。
【静岡県西伊豆町】
安良里地区では明治時代から昭和30年代までイルカの追い込み漁が盛んに行われていた。
伊豆には、捕獲したイルカの霊を慰めるための「いるか供養塔」が7つあり、そのうち3つは安良里地区にあるとのこと。
<写真>PhotoAC「静岡県・西伊豆町・馬ロック」より
<参考サイト>
・長太鯨船行事
・北勢・熊野の鯨船行事
・道徳になぜクジラ? 疑問きっかけに200年の歴史調べる 名古屋
・西伊豆・雲見温泉観光協会
・イルカ・クジラ・ネイチャーウォッチングセンター 光海丸
・いるか供養塔
・鯆霊供養塔
東海地域の鯨食文化について
捕鯨を行っていた三重や愛知などの、クジラを使った郷土料理を調べてみましたが、特にこれといったものが見つけられませんでした。
古くからイルカ追い込み漁が盛んだった静岡県伊豆の伝統的な郷土料理に「イルカの味噌煮」があります。
鮮魚店でイルカの肉が皿に盛られて販売されていた頃は、一般家庭で日常的に食されていたそうです。イルカの肉とゴボウなどの野菜を炒め、味噌などで味付けします。
<写真>PhotoAC「イルカ 煮物 静岡県」より
<参考サイト>
・伊豆の家庭料理 イルカの味噌煮
《クジラの豆知識》IWC会議速報・南大西洋クジラ禁漁区案の否決について
2024年9月26日、国際捕鯨委員会(IWC)は年次総会で、南大西洋にクジラの禁漁区(サンクチュアリ)を設定する案の採決を行いました。
結果は、賛成は40カ国、反対は14カ国と、賛成が可決に必要な75%に届かず、今回も否決されたようです。
商業捕鯨を行っているノルウェーは反対し、同じく商業捕鯨を行っているアイスランドは棄権したそうです。
鯨類禁漁区とは、IWCが設定する全鯨類の禁漁海域で、1979年にインド洋で、1994年に南極海でそれぞれ設定されました。
南極海の禁漁区は南緯40度以南(一部海域では同60度以南)とのことです。
南太平洋クジラサンクチュアリは、1998年にブラジル政府がIWCに提案して議論が始まったそうです。
<写真>Adobe Stock「World vintage」より
<参考サイト>
南大西洋クジラ禁漁区案、今年も否決 ノルウェー反対
鯨類禁漁区(サンクチュアリ)
IWC68 南大西洋クジラサンクチュアリ、またもや設立ならず
《クジラの美味しい部位をご紹介⑫》たけり
たけりとはクジラの陰茎のことです。室町時代の1556年、公卿の山科言継は、三河湾にある篠島(しのじま)の宿でクジラのたけりをふるまわれたという記録が残っています。
鯨肉の料理法を記した江戸時代の書物「鯨肉調味方」には、たけりは揚げ物または水煮にして生醤油、いり酒で食べるとよいと記されています。
また干したものを腹痛のとき削って味噌汁に入れて煮ると奇功がある、などと書かれているそうです。
たけりは大変希少な珍味で、下処理は長時間ボイルするなどとても手間がかかるようです。
ゼラチン質でコラーゲンが豊富に含まれており、もちもちプリプリした食感で、薄くスライスしたり刻んだりしたものをポン酢やカラシ酢味噌で食べるのがおすすめだそうです。
<参考サイト>
《おうちでも簡単!鯨肉実践レシピ⑫》鯨肉の味噌煮
イルカの味噌煮のレシピを参考に、鯨肉でつくる味噌煮をご紹介します。
《味噌煮の作り方》
【材料】(4人分)
・鯨肉:200g
・ゴボウ:120g
・ニンジン:80g
・ダイコン:80g
・こんにゃく:80g
・ショウガ:1かけ
・だし汁:4カップ
・砂糖:大さじ4
・酒:2分の1カップ
・味噌:大さじ3
【作り方】
・鯨肉は角切りにし、水が濁らなくなるまで流水で血抜きする。
・ショウガは薄切り、野菜は乱切り、こんにゃくは適当な大きさにちぎる。
・鍋に油(分量外)を熱し、ショウガと鯨肉を入れてさっと炒め、だし汁を入れる。
・野菜とこんにゃくを入れ、沸騰したら弱めの中火で、あくをすくいながら具材に火が通るまで煮込む。
・砂糖、酒、味噌で味をととのえできあがり
<参考サイト>
・イルカの味噌煮 静岡県
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